県環境政策課長、「事業者の貴重種の保全策は十分ではない。もっと詳細な調査を求め、事業者に具体的な保全策を求めていきたい。」と回答

 

皆様

泡瀬干潟を守る連絡会 事務局長 前川盛治

 

当連絡会は、1023日、県文化課環境部・環境政策課等に要請行動を行ないました。事業者(沖縄総合事務局開発建設部矩湾計画課、県土木建築部港湾課)が沖縄県環境部局(文化環境部部長、環境政策課)に提出した、「報告書」に関しての要請です。事業者との保全策の調整は、主に環境政策課が担当するということで、この要請になりました。

 環境政策課・上間仁課長の回答は次の通りです。

 

沖縄県文化環境部環境政策課 上間仁課長の回答(文責、前川盛治)

 

1.事業者の報告書に示される保全策は十分であるとは考えていない。

2.もっと詳細な調査を要求し、事業者に具体的な保全策を求めていきたい。県として、具体的な保全策を示すものではない。

3.発見されたホソウミヒルモ、ニライカナイゴウナ、リュウキュウズタ等は普通種とは違い、貴重種・重要種と認識している。特別な保全策を要求したい。貴重種の保全については、皆さん(泡瀬干潟を守る連絡会)と同じ立場である。

4.環境省にも報告書を送付し、沖縄県としての対応についてアドバイスを得たい、

5.現在、事務レベルで語句の修正や、疑義の点を照会しているが、沖縄県(環境部局)としての考え方をまとめ、知事意見として、文書で事業者に報告する。

6.今回出された報告書に関しての知事意見は、1回のみである。以後、事業者から意見を求められたら回答するが、沖縄県環境部局としての保全策を示すことはない。保全策は、事業者の責任で示されるものと理解している。設置されている環境監視委員会等の意見を聞き(専門家の助言のもと)、具体的な保全策を示してほしい。

7.貴重種等の県独自の調査は考えていない。

 

 環境政策課への要請の後、稲嶺知事と自然保護課課長に同じ内容の要請書を提出しました。その後、土木建築部港湾課を尋ね、要請文を手交し、保全策を示さない「報告書」の提出の責任を追及しました。課長が出張のため副参事が対応しましたが、私たちの要請の趣旨を課長に伝える、という回答にとどまりました。

 

以下は要請文です。なお、新聞報道等については、連絡会のホームページをご覧下さい。

ホームページ http://save-awasehigata.hp.infoseek.co.jp/index.htm

 

2003年10月23日 

沖縄県知事 稲嶺恵一 様  沖縄県文化環境部 部長 屋嘉部 長市 様  

環境政策課 課長 上間仁 様    自然保護課 課長様    

土木建築部港湾課 課長 小渡良彦 様

                泡瀬干潟を守る連絡会

                   共同代表 内間秀太郎 小橋川共男 漆谷克秀

 

「ホソウミヒルモ」「リュウキュウズタ」「ニライカナイゴウナ」等の保全の要請

 

 泡瀬干潟を守る連絡会や泡瀬干潟生物多様性研究会等の発表で、埋立予定地とその周辺で新種の可能性のある海草「ホソウミヒルモ」や日本初発見の貝類「ニライカナイゴウナ」等の生息が明らかになった。これらの貴重種・重要種について、沖縄総合事務局開発建設部と沖縄県土木建築部は、9月26日に報告書を沖縄県文化環境部長に提出している。この報告書は8月に報告された後の調査(8月〜9月)をもとに追加確認調査の報告となっている。この報告書をもとに、今後、事業者と沖縄県環境部局との間で、貴重種・重要種の保全策についての調整が行なわれると思われる。

 

 この報告書の事業者見解は、おおよそ次の通り(報告書から引用、要約)である。

1.ホソウミヒルモ、リュウキュウズタ等について

(1)基本的な考え方

ヒメウミヒルモは絶滅危惧U類、ウミヒルモは準絶滅危惧、ウミヒルモSP、リュウキュウズタ、ホソウミヒルモは貴重種・重要種に相当する種と同等の扱いとする。

ウミヒルモ類の4種は埋立予定地の外側を主要な分布域としている。予定地内では、0.1〜6.3%である。リュウキュウズタは確認された生育量は非常に少ない。

ウミヒルモ類4種ならびにリュウキュウズタについては、埋立区域内に局所的に生育個所がみられ、やむを得ず一部消失することになるが、泡瀬海域全体において大半の生育確認区域での埋立が回避されることにより、全体としてこれらの種への影響の低減を図ることができるものと考えられる。

(2)対応策

埋立地より深い主要な分布域の環境を保全することとし、次のとおりモニタリングをおこない、工事中の汚濁防止対策を徹底する。@生育環境にたいする工事中の水質汚濁監視 A生育状況の監視

2.ニライカナイゴウナ等について

(1)基本的な考え方

@オキナワヤワラガニは希少種、仮設橋梁の北側(比屋根湿地の海岸側)に多く生息。

Aニライカナイゴウナは貴重種・重要種に相当する種と同等の扱い。二枚貝へ寄生することから生態学的な特異性とともに貝類の系統分類学上重要な特徴を持っている。生育場所は埋立予定地の南から南東域で砂州の南西から南東に位置する。津堅島の西側の海草藻場にも生息。寄生主のソメワケグリ等の分布より狭く、生育条件が限られている。

Bオボロヅキについては情報が少ない。調査で得られたオボロヅキの可能性のあるツキガイ科については、貴重種・重要種として扱う。砂州周辺海草藻場内や周縁部の砂地に生息。

Cスイショウガイは埋立予定地、泊地計画地内のみで確認。

(2)対応策

@オキナワヤワラガニは、現在の生息している環境を保全し、モニタリングを行なう。

Aニライカナイゴウナ、オボロヅキの可能性のあるツキガイ科は、埋立計画地南東から南西部にかけての海草藻場とその周縁部並びに砂州周辺が主な生育地。生育環境の保全を図るために埋立工事中の水質汚濁の影響については、既存の水質(海域)監視調査によって毎月影響監視を行なう、主要な生育域における生息調査と低質粒度組成等の追跡調査を継続的に年2回程度おこなう。スイショウガイは普通種で分布も広域で種の希少性に関しては問題になる種ではない。 

 

 この報告書に見られる基本的な考え方、対応策は、発見された種が新種の可能性があることや日本で始めて発見された貴重種・重要種であることへの認識や、「種の保存」「自然環境の保全」にたいする認識が極めて弱く、埋立工事による影響をあまりにも軽視し、「埋立ありき」の立場であり、許されない。

 埋立工事が始まり、西防波堤の西側の砂州が急速に消滅しつつあることや、泡瀬海域における大型海草藻場の被度50%以上の面積が01年度56.8ha、02年度20.6ha、03年度10.3haと激減しつつあることをみると、埋立工事が環境を激変させていることは明らかである。工事がそのまま進行すれば、発見された種が絶滅を招く危険性があることへの配慮は全く見受けられない。

 また、調査結果はこれらの種が「どこに生育しているかの調査」が主であり、これらの種の生態的特徴や学術的な意義等希少性については、「今後の学術的な研究の進展に委ねる」とし、ほとんど解明されていないのが実情である。

ホソウミヒルモについては、専門家でもその生態的特徴(何年生か、花や種子について、葉の変化等について、繁殖の仕方、ハワイの固有種との比較検討、新種かどうかの鑑定等)は未解明である。

ニライカナイゴウナについては、報告書で「二枚貝へ寄生することから生態学的な特異性とともに貝類の系統分類学上重要な特徴を持っている」と重要性を指摘しながら、保全策は全く示されていない。

新種の可能性のある種や日本初確認の種についての学術的な解明や、その保全策が十分確立されないまま、工事がそのまま進行することは、許されないことである。

 

具体的には次の点が指摘できる。

1、ホソウミヒルモは埋立予定地をふくめ周辺海域でひとつの大きな群落を形成しており、全体を保全する必要性があるが、それについては全く触れていない。さらに、埋立工事が完了すれば、消失する場所は人工ビーチ(海浜)になるところであり、主な生息域は人工海浜に隣接しており、砂等の流出、海浜の汚染等で主な生息域での消失も予想される。人工海浜の砂の流失は沖縄の他の人工海浜でも報告されており、砂の流失・補給は未来永劫に続くことになり、その影響は計り知れない。

 新種の可能性のある、日本新産の種「ホソウミヒルモ」はハワイの固有種に似ており、生物地理学的にも重要であり、消滅すれば、世界的に非難を浴びることは必至である。また、ホソウミヒルモSPは、「SP」と記載されるように種の確定も未だである。ホソウミヒルモSPが「1種」なのかどうかも疑問である。ウミヒルモ類4種(それ以上?)を含めその生態的特徴も解明されておらず、学術的に未だ整理されていない状況の中で、埋立工事がそのまま進行することは許されない。

 

2.リュウキュウズタについては、調査では9つのポイントで発見され、内2つは埋立予定地であり、確認された生育量は非常に少ないとしている。埋立予定地で2つのポイント(22%)で発見されていることからすれば、「やむを得ず一部が消失」とはいえない。全体の保全が求められる。

 

3.ニライカナイゴウナ、オボロヅキ(ツキガイ科)については、埋立予定地が主な生育域であると報告している。しかし、保全策は、埋立工事を進めながら、水質汚濁等の監視活動、生育調査をすすめるとある。生育場所が埋立で失われれば、その種が絶滅することは火を見るより明らかである。これらは保全策になっていない。日本新産の貴重種・重要種、生態学的な特異性とともに貝類の系統分類学上重要な特徴を持っている(ニライカナイゴウナ)、と認識しながら、工事を進行し消滅に追いやることは許されない。

 

4.クビレミドロ(貴重種)の保全策が確定できず、2期工事が「保留」になっている状況、トカゲハゼの繁殖期(4月〜7月)には工事を中断する状況等と比較して考えると、「ホソウミヒルモ」や「ニライカナイゴウナ」等への配慮はほとんど無いといわざるを得ない。貴重種・重要種の取り扱いに一貫性がないことは明らかである。保全策が示されないままの工事進行は不可解であり、許されない。

 

 以上示したように、この報告書では、貴重種・重要種の保全策は全く示されていない。

この報告書を沖縄県がそのまま認め、工事継続を認めるならば、沖縄県の環境行政は、自然環境保護の立場を投げ捨てたものとして、未来に大きな禍根を残すことは明らかである。

琉球諸島を世界自然遺産に登録しようという大きな動きがある中で、沖縄の豊かな自然を守り、世界に誇る貴重な動植物が消滅する危機に有効な保全策を確立することは、今や急務である。

 

この報告書に対し、沖縄県として、環境省との意見調整を図りながら自然環境保全の立場から有効な保全策を示し、貴重種・重要種の保全の立場から、勇気をもって「埋立工事の中断、再考」を提言することを要請する。