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ジャングサマテガイ

 

記者会見文書

2005921日 午前10時〜 沖縄県庁記者クラブ

 

泡瀬干潟から発見された日本新記録種のジャングサマテガイの報告

及びコーセル博士(フランス国立自然史博物館)からの泡瀬干潟保全の要望書

 

泡瀬干潟生物多様性研究会・貝類保全研究会 代表 山下博由

神奈川県藤沢市鵠沼松が岡3-1-26-103

090-7167-3549/ yamashitayou@aol.com

 

泡瀬干潟を守る連絡会 事務局長 前川盛治

 

要約

1) 泡瀬干潟から日本新記録種のジャングサマテガイ(二枚貝綱マルスダレガイ目マテガイ科)が発見された.種の同定は,ジャングサマテガイの記載者であり二枚貝研究の世界的権威であるルド・フォン・コーセル博士(フランス国立自然史博物館)によって成された.

2) ジャングサマテガイは東南アジアと沖縄のごく一部にしか分布していない貴重な種である.

3) コーセル博士は,ジャングサマテガイの生息地の保護のために泡瀬干潟の埋立工事の中止を事業者に求める意見書を泡瀬干潟生物多様性研究会に託したので,それを公開する.

 

本文

泡瀬干潟に生息するマテガイの1種を,二枚貝研究の世界的権威であるルド・フォン・コーセル博士(フランス国立自然史博物館)に送って同定を依頼したところ,これまで日本では確認されていなかったジャングサマテガイSolen soleneae (Cosel, 2002) (二枚貝綱マルスダレガイ目マテガイ科)であることが判明した.

ジャングサマテガイは,これまで中国のアモイ(模式産地),香港,マレーシアのペナンの3ヶ所でしか分布が確認されておらず,泡瀬干潟は世界で4番目の分布地となる.

ジャングサマテガイの記載者であるコーセル博士は,ジャングサマテガイの重要な生息地である泡瀬干潟の埋立中止を求める意見書を貝類保全研究会を通じて埋立事業者に提出することを託したので,ここに公開し,内閣府沖縄総合事務局に提出する.

なお,コーセル博士による指導後,ジャングサマテガイは金武湾の屋慶名,中城湾の佐

敷にも分布していることが確認されたが,屋慶名と佐敷の個体群規模はいずれも泡瀬より小さく,泡瀬はジャングサマテガイの日本最大の生息地であることが分かった.沖縄の西海岸や八重山諸島では発見さておらず,非常に分布域の限定された種であることが明らかである.全世界で6ヶ所でしか確認されていない種であるが,そのうちの泡瀬干潟・佐敷干潟の生息地は埋立によって失われようとしている.

 泡瀬干潟ではサンゴ礫の海草藻場に生息しており,埋立計画地内に多く生息している.佐敷干潟ではこれまで2個体しか確認されていないが,その確認地にも埋立計画がある.Cosel (2002)の新種記載論文では,生息地の詳細な状況は不明であるとされており「恐らく低潮線下の浅海の砂底に生息しているのではないか」とされていたが,沖縄での発見により潮間帯のサンゴ礫の海草藻場に生息していることが明らかになった.泡瀬干潟の生息地の存在が本種の生態解明に寄与しており,今後も研究上重要な場所となることは疑いがない.

泡瀬干潟の生態系の重要性を,あらためて裏付けるものとして,ここに報告する.

 

*****

コーセル博士の意見書

 

(貝類保全研究会気付:泡瀬干潟埋立工事の事業者宛て)

 

拝啓

私は沖縄沿岸の泡瀬干潟や他の干潟が埋立計画によって危機に瀕していると聞きました.

干潟,特に熱帯の干潟は多くの動物種にとって非常に豊かな環境であって,泡瀬干潟も例外ではありません.

私は泡瀬干潟のマテガイ科(軟体動物門二枚貝綱)の種を検討する機会を得ました.マテガイ科は非常に特殊な生活型を持ち多くの種は干潟域にのみ生息する二枚貝で,垂直の孔に生息し,孔の中を上下に移動します.

そのような干潟の生息環境が破壊された場合,そこに生息する生物は他の場所へ移動することができません.

泡瀬干潟はジャングサマテガイの最も大きな重要な生息地であり,この熱帯性種の日本唯一の生息地です.

ジャングサマテガイは東南アジアに非常に飛地的に分布しており,泡瀬干潟に代表される沖縄のような特殊な生息環境を必要とします.

もしこの泡瀬干潟の環境が破壊されるならば,この二枚貝にとって日本固有の最も重要な個体群と,この個体群を含む全生物群集は生き残ることができないでしょう.

これらの理由によって,私は泡瀬干潟の埋立計画に対して断固とした反対を表明します.そして,別の解決策が見出されること,泡瀬干潟に固有の環境と生息地が保全されること,そしてできればその自然の保全が公布されること,以上を強く進言致します.

この埋立計画が今からでも中止されることを希望致します.

敬具.

 

ルド・フォン・コーセル

フランス国立自然史博物館,二枚貝専門家

 

*****

(英文原文)

 

Dear Sir,

 

I have been informed that the Awase tidal flat (and apparently also other tidal flats) on the coast of Okinawa is threatened by a reclamation plan.

Tidal flats, especially in the tropics, are always an extremely rich environment for numerous animal species, and the Awase tidal flat makes no exception.

I had the opportunity to examine species of Solenidae (Mollusca, Bivalvia) from this area, a family of infaunal bivalves with very special mode of life and of which many species are strictly confined to tidal flats, where they live  in vertical burrows in which they can descend and ascend.

When such a biotope is destroyed, the animals are too, and they have no possibility to go elsewhere.

The Awase tidal flat is the most large and important habitat for Solen soleneae, a tropical species of which Okinawa is the only locality in Japan.

S. soleneae has a very scattered range within SE Asia and requires a special biotope which in Okinawa is most represented by the Awase tidal flat.

If this environment would be destroyed by reclamation, the most important population of this bivalve unique for Japan as well as the whole community of which it is part would not survive.

On these grounds I herewith express my firm opposition to the plans of reclamation on the Awase tidal flat, and I strongly recommend to find other solutions, to preserve the unique environment and habitat of this area and, if possible, to declare it a nature reserve.

In the hope, that the reclamation plan can still be stopped, I remain

Yours sincerely

 

Rudo von Cosel

Specialist of bivalves

National Museum of Natural History, Paris

ジャングサマテガイSolen soleneae

沖縄市泡瀬干潟

20045月採集

4.0 x 1.0 cm

 

新聞報道

琉球新報

沖縄タイムス